サールの悪魔

久しぶりにSF小説を読んだ。「神は沈黙せず」というSFミステリである。

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(上) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

神は沈黙せず(下) (角川文庫)

(ネタバレ注意なのでまだ読んでない人はお気をつけ下さい。)


上巻は面白く読めたが下巻の無理矢理なまとめかたがどうも納得いかない。情報量が売りの小説らしいが、浅く広くなので一つひとつのネタは雑学程度といった感じ。
この世界を神によるコンピュータシミュレーションにたとえるのは面白いが、カギとなる「サールの悪魔」についての記述が浅い。それによってラストのオチについても説得力がなくなってしまっている。
小説中にサールの中国語の部屋という思考実験を引き合いにだすのは妥当ではないであろう。かえって言語哲学の立場から見た場合疑問だらけになってしまうのではないか。
全体的な感想から言えば、いかにも理系人間が考えそうな世界観で文系人間から見るとつっこまずにはいられなくなる。「なにが、どうなっている」、ということは正確に記述できたとしても「なぜ」という疑問はいつまでも解決できないという小説である。
最後に、聖書のくだりは面白かったがああいう解釈で片づけるのはちょっと……。