ケニア人はなぜ足が速いのか
マラソン大会にでたことはないけれど、よくジョギングをしている。最初はダイエットや健康目的だったが、体重が減ると目的もだんだんと変わってきて、今はどうしたら理想の体型に近づけるかに主眼をおいて走る日々である。
- 作者: 忠鉢信一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/06
- メディア: 単行本
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著者の姿勢が真っ直ぐに伝わってきてよい。また、専門的な解説になりすぎずに軽いフットワークで様々な陸上関係者にアプローチしているので、マラソンに関する知識がそんなになくても読み進めることができるのではないだろうか。
話はケニア人(特にカレンジン族)がなぜ足が速いのかを、遺伝的なものによるかどうかという議論から始まる。ところが、どうにもこうにも決定的な答えが見つからない。ケニア人の遺伝子を調べても、他の人種(例えばヨーロッパのマラソンランナー)と顕著な差がみられない。ということは環境かと言えば特に練習量が多いわけでもなく、練習方法の違いによってもうまく説明できない。読者はまるで、著者と一緒に速さの秘密を探す旅にでているような気分になる。最後には著者なりに結論らしきものを提示しているが、それは絶対的な答えではなく、スタートラインに立っただけに過ぎないとことわっているのが印象的である。
本書で最も興味深かかったのはランニング中の水分補給に関するトピックである。マラソン業界ではランニング中の水分補給は積極的にすべき、というのが常識となっているが、本書に登場する研究者の一人は疑問を投げかける。それだけでなく、スポーツ科学において学術論文が認められるかどうかが、スポンサーなどが絡んだ経済的な要素によっても左右されるのではないかというひそかな可能性も見いだしている。
このことはスポーツ科学だけの話ではないように思われる。学問という分野全般においても市場の経済原理からは逃れられず、常に予算との闘いである。金になるかならないかという問題は、その研究結果に需要があるかないかとも言い換えられる。つまり、どんなに客観的なデータを駆使した理論でも市場に受け入れられなければ認められないのだ。
余談だが麻生首相のランニングフォームがひどいと思うのは僕だけだろうか。完璧なフォームというのはありえないが、それにしてもひどすぎる。テレビで麻生首相のジョギング姿を見るたびに誰か指導する人はいないものだろうかと考えてしまう。