乱読

推理小説ばかり読む
 本ばかり読んでいると体に悪そうだが止まらない。一種の強迫観念のようなものか。

虚無への供物 (講談社文庫)

虚無への供物 (講談社文庫)

 『匣の中の失楽』を読んだ後立て続けに『虚無への供物』を読む。三大ミステリの一つである『虚無への供物』だが、トリック云々の前にどうも物語に入り込めない。登場人物に感情移入できないのだ。単に時代背景の問題でもなさそうだし、この作家と私は相性が悪いのかなと思った。

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

それに比べ、この小説に対するオマージュとされる『匣の中の失楽』が違和感なく読めたのはやはり現代風になっている訳なのだろうか。
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

 
『葉桜の季節に君を想うということ』はタイトルに惹かれて読んだが期待はずれ。ラストに関して言えば、やられたというより興ざめに近い感覚だった。 
『マヂック・オペラ』は前作である『ミステリ・オペラ』に引き続きなかなか良い。どうやら私は推理小説を読む際にトリックやラストの意外性といった点より、ストーリーや文体そのものに重点を置いて評価してるような気がする。
封印再度 (講談社文庫)

封印再度 (講談社文庫)

 
ついでに『封印再度』も読む。この作者の小説はいつもながらサクサクと読める。良くも悪くも引っかかるものがない。シンプルでつるつるした肌触りである。しかしながらこの作品に関して言わせてもらうと、シリーズの最初の頃に比べてヒロインが嫌な女になってきていることが残念。というのも性格的にあっさりしていて凜としたような女性像だったはずが、だんだんと陰湿でジメジメした女の情念の欠片のようなものが突出してきた感が否めない。登場人物全員に言えることだが私はこの作者には人間のドロドロした内面の描写には全く期待していない。逆に現実ばなれした人間描写、良い意味での世間ズレした透明な感じが好きだったのだが、これはあくまでも私の好みの問題か……。

草枕 (新潮文庫)

草枕 (新潮文庫)

 ジャンルが偏ってばかりもいけないので夏目漱石の『草枕』を再読する。単語ひとつひとつ注釈をめくりながらだったので、読むのにずいぶん時間がかかった。『こころ』なんかに比べると、こんなに読みにくかったっけ?と思ったりした。