幻の女
- 作者: ウイリアム・アイリッシュ,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/04/30
- メディア: 文庫
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ずいぶん評価の高いミステリー小説らしく江戸川乱歩も褒めているので読む。
ひどくイライラさせる小説である。手に汗握るとか気をもませるといったレベルではない。登場人物の行動一つ一つが理解不可能であるため、感情移入どころか苛立ちすらおぼえてしまう。読者(私)はずっと登場人物の非合理的な行動に付き合わされるハメになり、さんざん引っ張り回されたあとに意外なラストを迎えたとしてももうどうでもよくなってしまった。
よく推理小説なんかで身勝手な行動をしている登場人物に対して「やれやれ」と思わされること、例えば閉ざされた山荘なんかで一人目の犠牲者がでたあとに「俺はお前らなんかと一緒に行動しないからな!」と一人息巻いて勝手に単独行動した挙げ句に次の日にまんまと死体となっている状況がしばしばあるが、それよりもひどい。
特に主人公の愛人のキャロル・リッチマン。彼女がしでかした行動は軽率すぎるし、より悪い状況を作りだしている。バーテンダーが気の毒でしょうがなかった。他になにか方法があるだろうと呟かずにはいられない。
それと、幻の女っていうのがただのキチガイだったっていうのが腑に落ちない。というかこの事件自体、偶然が重なりすぎ。後味の悪さだけが残り全然スッキリしない。
あの時代のアメリカの司法制度は知らないが、死刑執行当日に新たな証拠がでただけで死刑執行がストップされるというのはすごいなあ。