旅と歴史

イラストクワイ河捕虜収容所―地獄を見たイギリス兵の記録 (現代教養文庫 1109)

イラストクワイ河捕虜収容所―地獄を見たイギリス兵の記録 (現代教養文庫 1109)

 久しぶりにフランクルの『夜と霧』を読み、アジアでの捕虜収容所に興味が出てきたので『イラスト・クワイ河捕虜収容所』を読んだ。
この本は全体として見開きの右ページで収容所体験の文章があり、左ページが著者の描いたイラストという体裁になっている。著者の画風がつげ義春に似ていて悲壮感がただよっている。
 不思議なことだが、夜と霧を読んだ後ではタイ・ビルマにおけるイギリス人捕虜のこの体験記はまだマシなような気がした。これはおそらく相対的な比較でそう感じただけであり、このイギリス人だってそうとう悲惨である。
バタバタと仲間が死んでいく中でこの著者が感じたことは「ここでは宗教はなんの役にもたたない」という衝撃的なものだった。聖書はちぎられ、排泄の時に尻を拭くのに用いられたという。そして、ここでは信仰とは違った意味での精神的なものが重要であると言っていたのが意外であった。
 極限状態で人間が何を求めて何によって救われるか(もしくは救われないか)が浮き彫りになる2冊であった。


地球でいちばん過酷な地を行く―人類に生存限界点はない!

地球でいちばん過酷な地を行く―人類に生存限界点はない!

 世界で最も暑い、寒い、などの国々を訪れる紀行もので、極端なだけに面白かった。世界一寒いところだけは絶対に行きたくないと思った。


恋愛旅人

恋愛旅人

 前半のアジア編に比べてアフリカ、ヨーロッパのパートがつまらなく感じられた。文章のテンションが全然違うと思ったら初出が書き下ろしだったりそうでなかったりと角田光代旅行記の寄せ集めだったということで納得。全体の統一感がないのが残念だがアジアのパートは良かった。


本棚探偵の冒険

本棚探偵の冒険

 本好きにはたまらない一冊。この人の漫画を知らなくても十分楽しめる内容であり、人がマニアになっていく過程がよくわかる。
また、古本蒐集マニアというものはある程度の金がないとダメだっていうことがよ〜くわかった。
 しかし読んでいてだんだん気になったのは著者の喜国氏が買った本を全然読まないということ。つまり単に本そのものを集めるのが好きなのであって読書は二の次というスタンスである。それはそれで文句は言えないが、こういったマニアが増えれば増えるほど稀覯本などは大金を出さないと読めないことになり、情報の独占がますますはびこっていくのではないかという危惧である。
 彼らの対極に位置するのは、本なんて読めれば初版だろうが絶版だろうが関係ない、要は本は読むためにある、と思う読書家たちであろう。読書家たちが読みたい本が読むつもりもない古書蒐集マニアによって買い叩かれ、本棚の隅で誰に開かれることもなくじっとしている光景を想像すると妙な不快感がわきでてくる。これではますます本が売れなくなって書籍が電子データベース化されるのは必然である、というのは言い過ぎか。


ガラパゴスの怪奇な事件

ガラパゴスの怪奇な事件

 面白い。ノンフィクションでこんなに夢中になったのはいつぶりだろうか。
 1929年、ドイツ人の男女二人が文明生活を離れ、ガラパゴス諸島のある島に理想を求めて上陸するが、そのことが本国で有名になるにつれて島には侵入者たちが訪れるようになる…。
 冒険譚でもありサスペンスでもあるこの実話は住民同士の争い、行方不明者、死体など最後まで謎が残るエピソードであふれており、実に興味深い。